いま目の前にある「性奴隷」には目をつむる韓国

いま韓国では、女性のスポーツ選手がコーチから性暴力を受けたという被害の告発が相次ぎ、大きな社会問題となっている。

去年7月、国内チャンピオンを目指すテニス選手だったキム・ウニさん(27歳)は、10歳だった小学生の時に、コーチからレイプされ、その後も2年にわたって、何度も合宿所のコーチの部屋に呼び出され、レイプされ続けたと、実名で告発した。当時はあまりにも幼く、それが性行為であることさえ分からず、レイプであることを理解するまでに何年もかかり、苦しんだという。キムさんがあえて外国メディア(AFP通信)に顔をさらし、自身の体験を打ち明けたのは、韓国では女性アスリートがコーチから性的虐待を受けても泣き寝入りするケースがほとんどだという実態を明らかにするためだったという。「私をレイプした男が、何事もなかったかのようにその後も若いテニス選手たちのコーチを続けているのを見てぞっとした。これ以上、小さい女の子たちを虐待するチャンスを与えてはならないと思った」という。キムさんは元コーチを刑事告訴し、元コーチはその後、起訴された。

(「韓国スポーツ界に横行する指導者の性的虐待、元選手が告白」AFP2018年7月24日配信)

http://www.afpbb.com/articles/-/3183450 

さらに去年12月になると、今度はソチと平昌の二度のオリンピックで、ショートスケート女子で金メダルをとったシム・ソクヒ(沈錫希)選手(21歳)が、17歳の時から平昌オリンピックまでの4年間、代表チームのコーチから性的暴行を受けてきたことを明らかにした。確かにテレビに映るシム・ソクヒ選手は、金メダルをとっても少しもうれしそうではない暗い表情の選手として記憶に残っているが、選手生活の影ではそんな暗い体験があったのだ。

ところがこれだけには収まらず、ショートスケート代表チームの関係者は「スケート界の性的暴行の被害者は、私たちが把握しているものだけでさらに5、6人いる」と明らかにした。

(KBSニュース「スケート界 性的暴行の被害者はさらにいる」)http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=70707

さらには、柔道やテコンドー、カーリングの選手などからも、セクハラや性暴力の被害の告発が相次いだ。スポーツ界における女性アスリートに対する虐待、性暴力事件の実態について、女性家族部長官は「指導者たちが、選手を奴隷のように扱っているからだ」と述べた。

こうした事件が続く理由は、「選手の未来に絶対的な権力を行使するコーチと監督、外部から遮断された閉鎖的な合宿所と訓練場、事件を黙認・幇助・共助してしまう関係者たち」という構造的問題があるという指摘のほか、コーチが選手を『掌握する』手段、いわば絶対な上下関係を作る手段として、女性選手へのレイプが横行しているのだという。スポーツ指導者の間では、「女性を掌握するには、性関係が一番、全員に手を出しておけ」などという会話が普通に交わされているともいう。(「シンシアリーのブログ」1月18日)http://sincereleeblog.com/2019/01/18/人をなんだと/

シム・ソクヒ選手に対する性暴力事件を受けて、文化体育観光部は加害者の永久除名処分やセクハラで懲戒処分を受けた関係者の海外就業の禁止など、セクハラ予防と性暴力根絶のためとする対策を発表した。また大韓スポーツ協会は、合宿所の実態調査やロッカールームなどへの監視カメラの設置などの緊急対策を発表した。

(KBSニュース「スポーツ界のセクハラ 根絶対策を発表」)

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=70697

スポーツ界だけではない。競争の激しい芸能界では、チャンスをつかみ取るのは100人に1人以下という狭き門のなかで、歌やダンスを猛練習させて篩に落とし、食事や体型に至るまで私生活を徹底的に管理し、取引先への接待の強要など、それこそ「奴隷契約」と呼ばれるような不当な雇用形態が当たり前になっている。番組プロデューサーや広告主である企業幹部への「性上納」などといったスキャンダルが絶えず、自殺者まで出している。

要するに、男性優位の韓国社会は、上に立って権力を振るうことが出来るものは、下の者を思うがままに扱えるという「両班」的な発想がいまだに支配し、古代社会から抜け出していないのではないか。朝鮮には、姓や家を持つことを禁止され、教育を受ける権利を奪われた白丁(ペクチョン)と呼ばれる賎民・奴隷が20世紀初めまで存在した。日本が統治して身分制度を撤廃して初めて自由を得て解放された人々である。

両班以外は、人間ではないと考えるのが彼らの長い伝統だった。そうした体質から抜け出すのはなかなか容易ではないかもしれないが、韓国の男たちが、思考行動様式を自ら自覚し、改めようと真に反省しないかぎり、女性を未だに性奴隷扱いする社会は変わらないだろう。

ところで、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は1月16日の新年最初の記者会見で、2015年12月の慰安婦問題をめぐる日韓合意に関する韓国政府の今後の対応方針を質問されて、「 慰安婦のようなつらい歴史的経験がそのまま消え去らないように、国際社会の戦時性暴力をめぐる対話に韓国がより積極的に貢献できる方策を練っている。被害者の意向に沿った対策を見出せるよう、ことし前半の国際会議の開催を進める」と話し、「戦時性暴力に関する国際会議をことし前半にも開催する方針を明らかにした。慰安婦問題をめぐる日韓合意では、韓国政府はこの発表で「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」としたほかに、両国政府は「今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」ことも合意していたはずだった。韓国政府による国際会議の開催は、明らかにこの合意に違反している。

さらに慰安婦問題をめぐる日韓合意について、 康長官は、「韓国政府は去年1月に、この合意では真の解決策にはならないが、政府間の合意は再交渉を行わないとする立場を明らかにしている。したがって、この合意は今後も継続して存在する。しかし、日本に対しては、被害者の心に近づく真の措置や、歴史的な事実や正義にもとづく努力が必要だと言い続けている」と強調した。(KBSニュース1月17日「韓国外相「戦時性暴力に関する国際会議開催」を推進」)

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=70788

ソウルの日本大使館前の少女像の撤去など、日韓合意における韓国側の約束は何も実行しないまま「合意は継続としている」と強弁し、あまつさえ合意事項はすべて実行した日本に対しては、さらなる道義的責任が必要だと蒸し返す。徴用工をめぐって日本企業の損害賠償責任を認めた韓国最高裁判決を受けて、被害者救済の財団の設立という話が出ているが、一方で、慰安婦問題に対する「和解・癒やし財団」は解体している。徴用工被害者に対する新たな財団をつくるなどとよく言えたものである。どんな約束も一方的に反故にし、合意した内容を簡単に覆す韓国の対応はまったく信用できない。

しかし、康長官は、「戦時性暴力に関する国際会議」開催というけれど、70年以上も前のみな記憶の薄れた時代の問題を取り上げるより、いま現に起きているスポーツ界での性暴力、いま目の前にある「性奴隷」被害について、韓国国内で徹底的に議論する場を造ったほうが、よほど韓国のために役立つのではないだろうか。

はてさて、スポーツ界や芸能界にある現実としての「性奴隷」を目の前にして、戦時性暴力をテーマにしたいかなる国際会議になることか、注目したい。

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