ラムザイヤー教授があぶり出した慰安婦の真実

「慰安婦=性奴隷」という直截的・断定的な定義しか通用しない中で、「慰安婦=売春婦」という、いわば当然のことを学術論文の形で、しかも世界的権威のハーバード大学ロースクールの教授が発表したものだから、韓国はいま、天地をひっくり返したような大騒ぎになっている。まったく理解不能、異様な国だ。

ラムザイヤー教授(J. Mark Ramseyer)が、International Review of Law and Economics誌Vol.65,March 2021に発表した「太平洋戦争における性サービスの契約(Contracting for sex in the Pacific War)」という論文が、その騒ぎの中心で、論文の中身については、のちほど詳しく検証するとして、論文の主旨は、日本の保守系メディア(「正論」や「Will」など月刊誌、虎ノ門ニュースや桜チャンネルなどのネット番組)で論陣を張る学者や評論家、それに韓国で「反日種族主義」という本を書いた李栄薫(イ・ヨンフン)落星台経済研究所所長のグループや金柄憲(キム・ビョンホン)国史教科書研究所長ら、いわゆるニューライトと呼ばれる学者、研究者たちがこれまで言ってきたことと大差はない。当ブログでも、そうした人々の主張は何度も取り上げてきた。

現在の文在寅政権を支持する韓国の市民団体、たとえば慰安婦を食い物にしてきたことで有名になった「正義記憶連帯」(旧「挺対協」)や「サイバー外交使節団VANK」を名乗る対外宣伝工作機関(ボランティアだと称するが半官半民組織だともいわれる)などは、「慰安婦=売春婦」だと主張する韓国の学者・研究者に対しては「親日・反動派」だと罵倒し、日本の学者・評論家は「極右」「歴史修正主義の安倍一派」などとレッテル貼りして一刀両断すれば済む問題で、論文の中身など初めから検討もせず無視するのが普通だった。

しかし、今回は、親日派と言うだけでは収らず、「日本から金を貰って書いた」「根拠資料もなく、論拠もない間の抜けた学術作品」「自発的売買契約があったというのは、完全なフィクションだ」「学者としての資格もない」など、論文の中身より、人身攻撃や人格否定、人種差別的な罵詈雑言に終始している。それだけハーバード大学という権威に弱い証拠でもあるが、韓国のメディアは、連日、ラムザイヤー教授の論文を否定するため、世界中から慰安婦問題やジェンダー、フェミニズム運動など、いままでお付き合いのあった学者・研究者をかき集め、ラムザイヤー教授を批判するコメントを集めては、記事にするのに躍起だ。

そのうちの一人、カリフォルニア大学アーバイン校のマイケル・チョイ準教授は、

ラムザイヤー教授の論文について、「学問的な準拠が乏しく、誠実性や倫理性にも反して、『学問の自由』の範囲を越えた違法行為だ」とまで批判し、論文の是正を求める署名運動を展開して、すでに内外の学者600人余りの署名を集めたという。自由な発想に従い研究活動を行い、自分の知見を発表することがどうして「違法行為」なのか、そうした署名活動自体が自分の首を絞めることになることに、この人は気づかないのだろうか。

さらに、「日本軍性奴隷制問題解決」を謳う正義記憶連帯は2月17日、「ラムザイヤー教授の慰安婦関連論文に関する全世界フェミニスト声明」と題した声明を発表し、声明には米国・フィリピン・英国・オーストラリア・ニュージーランド・ドイツ・カナダなど海外と国内の約1000人の研究者と団体が名前を連ねたという。

そこまで熱心に学者・著名人を組織するなら、そこに向けたエネルギーの10分の1でも使って、ぜひ、中国・新疆ウイグル自治区で性的迫害や強制不妊手術など、現在進行形で残虐な人権被害に遭っているウイグル人女性の救出や解決に力をふり向けてほしいものだが、これら韓国の左派系市民団体は、同胞である北朝鮮の人権問題に対してすら、過去にひと言も発したことがない。ウイグル人に対するジェノサイド(民族大量虐殺)に関して、中国を激しく批判する欧米諸国から見たら、ウイグル問題にはひと言も発せず、当事国同士で外交的には決着が付いたはずの歴史問題に未だにすがりつく韓国は、いびつで理解不能な特異な国だと思うだろう。

ところで、韓国では、盧武鉉政権のとき2004年9月、「性売買特別法」(いわゆる売買春禁止法)が成立するまで、「集娼(집창)村」とか「淪落(윤락)街」だとか言われた性売買密集地域、いわゆる赤線地帯があちこちにあった。ソウルの3大私娼街と呼ばれた、ミアリ(城北区下月谷洞)、清凉里588、千戸洞テキサスがその代表だった。その「性売買特別法」が施行されて11年後でさえ、売春をなりわいとする女性たちが公然とデモ集会を開き、売春の合法化を求めたというニュースが流れた。マスクにサングラス姿の女性1000人が「性労働者たちの人権と生存権を脅かす悪法である性売買特別法の廃止を求める」という決議文を発表したのだ。売春の合法化が、今でもイシューになっているという韓国の現実を如実に物語っている。

excite news 2015/10/1「韓国『性売買特別法11周年』で売春婦1,000人がデモ! “性産業大国”汚名返上には、合法化しかない!?」>


実は、そうした「性労働者」たちが、今も公然と姿を見せている風俗街が、ソウルから電車で1時間ちょっと、京畿道水原(スウォン)に今もある。スウォン駅から歩いて京畿道道庁に向かう途中の200メートルほどの道路の両側は、美容室を装った全面ガラス張りの店が並び、店の中では、体の線を強調した服を着て、すらりとした美女たちが、通りかかった男たちに艶然と流し目を送り、微笑みかけてくる。いわゆるオランダなどでの「飾り窓」(Window prostitution)と同じ風景でもある

こうして今も間違いなく存在する韓国「性労働者」の問題には目を向けず、中国新疆ウイグルの強制収容所で、いまこの瞬間も行なわれているウイグル人女性に対する残虐な性虐待には知らんぷりで、なにが「全世界フェミニスト声明」なのか?

ところで、米国務省の報道官は、聯合通信の書面インタビューに答え、「日本軍による性的な目的での女性の人身売買はひどい人権侵害」だとの立場を示したという。そうだ。「日本軍による」はさておき、この「人身売買」こそが問題の本質をつくキーワードなのだ。つまり、「強制連行」とか「性奴隷」とかいう問題ではなく、「人身売買」、しかも「ひどい人権侵害である人身売買」であることが、問題の本質なのである。

朝鮮日報21/2/19「慰安婦問題は「人身売買・ひどい人権侵害」米国務省」>


かつて、このブログでも、「人肉市場」とか「人肉商」などという、おどろおどろしい言葉が、戦前の朝鮮の新聞紙上を賑わせていたことを取り上げた。

ここでいう「人肉市場」とは、女性を肉の固まりとして扱い売り買いする人身売買のこと、また「人肉商」とはそうした女性の売買、誘拐、詐欺・拐かしの類いを行うブローカー、仲介人のことを指す。当時の朝鮮半島では、父母が自分の娘を、兄弟が姉妹を、あるいは夫が妻を、叔父・叔母が近所の姪を、借金の形に売り払ってしまうという行為が、平然として行なわれていた。

それは、20世紀初めまで、奴婢と呼ばれる身分制度が存在し、家畜同様に売り買いされる対象だった時代背景を抱え、さらに長い間、女性が中国への朝貢品=貢女として差し出されてきた伝統を引き継ぐものだったのかもしれない。

しかし、さすがに日本統治時代なってからは、詐欺や拉致誘拐など不法行為をもとに行われた悪質な人身売買事例に対しては、警察も介入し、摘発していたことが新聞の見出しからも分る。しかし、正式な妓生営業許可を取っていた場合や、周旋募集業者「人肉商」が養子縁組を偽装し、女性の戸籍を書き換えた場合などには、捜査は難しかったといわれる。「人肉市場」=人身売買に関する事件の新聞記事の画像は、以下のブログで確認できます。

<当ブログ2020/9/8「『人肉市場』が新聞紙面に頻出した韓国の悲惨」>

https://fujinotakane.amebaownd.com/posts/10052226

https://ameblo.jp/shimakichi-san/entry-12624151372.html

そしてこれこそが、米国務省報道官がいうところの「ひどい人権侵害である人身売買」の実態なのである。そこに日本軍が介在する余地はなく、介在しなくても朝鮮人の募集業者、つまり「人肉商」と「人肉市場」を経由して、慰安所には慰安婦が潤沢に供給される構造になっていたのである。

ラムザイヤー教授に対する批判のなかで、実際の慰安所とオーナーと慰安婦の間で交わされた契約書の実物を入手していないではないか、という批判があったが、おそらくすでに公娼となって自立している女性を除いては、そんな契約書は作られなかったはずである。

ラムザイヤー教授の論文で、「年季奉公」のことを英語でindentured servitude(雇用者との契約の下に一定期間働く雇用制度の一形態)と訳すということを初めて知った。まさにこの「年季奉公契約」indenture contractsこそが、前借金の支払いと交換に女性を一定期間、つまり年季が明けるまで、慰安所で働くことを義務づける根拠となる契約だった。

そして、ラムザイヤー教授がいうこの「年季奉公契約」とは、とりわけ朝鮮での場合、慰安所のオーナー(抱え主)と慰安婦とが直に結んだ契約ではなく、周旋・募集業者つまり「人肉商」と、将来、慰安婦となる女性の戸主・親権者との間で交わされた契約のことなのである。

慰安婦募集のプロセスをもう一度、見てみる。中国とか東南アジアには日本人や朝鮮人が経営する慰安所があった。軍の駐屯地近くの慰安所は日本軍が軍の施設に指定し管理監督を行なった。こうした慰安所に女性を連れてきたのは、慰安所経営者とは別の周旋業者・募集業者だった。彼らは朝鮮各地を回り、貧困家庭の両親等と接触し、前借金を与え、良い仕事があるなどと誘って、その娘を連れ出した。いわばこの前借金の証文にあたるのが年季奉公契約だった。

女性を受け渡され、中国や東南アジアの慰安所に連れて行った周旋業者と慰安所のオーナーの間には、前借金の額や年季奉公の期間などについて、別途、申し渡しがあり、あるいは別の契約書があったかもしれないが、朝鮮出身の若い女性が契約の直接の主体になることはなかった。だからラムザイヤー教授も、契約書の実物がないという批判に対し、「そのようなものはこれからも見つかることはない」と答えている

ところで、ラムザイヤー教授は論文で、慰安婦は当時の日本政府の法規制の下で認められた公娼制度の延長線上に存在したこと。当時の日本の内務省は慰安婦の募集に当たっては、公娼制度の下ですでに就業している女性を対象に、慰安婦を募集するよう慰安婦募集業者に求めていたこと。管轄の警察署は女性が自らの意思で募集に応じたことを調査書で確認していたこと。さらには、戦地に赴くリスクを考慮し、慰安婦には高い報酬が支給され、契約期間は最大でも2年と比較的短く、契約が満了したあとにすぐに帰国させていたことなどを論拠に上げ、日本政府または朝鮮総督府が女性に売春を強制したわけではなく、不正な方法で慰安婦を募集した業者に協力したわけでもないと主張している。

ラムザイヤー教授によると、「慰安所」という戦時売春宿をめぐる韓国と日本の長期に及ぶ政治的な論争は、そこに介在している「契約の力学」を曖昧にしているといい、次のように説明する。

「売春婦の年季奉公契約は、ゲーム理論でいう「信頼できるコミットメント」というロジックに従っている。若い女性は売春が危険で過酷な仕事であり、たとえ短期間従事しただけでも自らの評判を損なうものであることを理解しているので、十分な報酬が得られるという信頼できる保証を求める。一方、売春宿は売春婦が顧客を満足させるよう動機付ける必要がある。最初に売春婦に大金を支払い、顧客を満足させればさせるほど返済が進み、早くやめることができるという年季奉公契約は両者の思惑が一致したものとなる。」(産経新聞1月31日、福井義高・青山学院大学教授による要旨・解説)

しかし、前述のとおり、こうした記述は、すでに公娼として自立している日本人女性が慰安婦の募集に応じたケースを例にしたものであることは、ラムザイヤー教授の論文を読めば分る。それにしても、この「ゲーム理論」に従えば、慰安婦女性の理屈や心情は現実的かつ合理的に、じゅうぶん納得できる。それに引きかえ、韓国人の元慰安婦被害者を自称する女性たちの証言は、時にはあやふやで、時には感情まかせ、何となく現実感や合理性に欠け、腹に落ちないのはどうしてだろうか。やはり人間本来の欲である金銭や利害得失で考えたほうが理解しやすく、逆に強制や暴力だけで説明するのはもはや限界があるのだと思う。

さて、ラムザイヤー教授の「慰安婦は契約に基づく売春婦である」という主張を裏付ける「手続き書類」があることを紹介したい。

年季奉公契約を結んだだけでは、慰安婦となる女性を中国や東南アジアなど海外に連れ出すことはできず、海外渡航のための様々な法的手続きが必要だった。その際、この女性の渡航目的が、海外で慰安婦(酌婦)として従事することであることを証明するさまざまな書類が必要だった。つまり、この時点で本人の意思に従って慰安婦になったことを証明し、決して本人の意思に反しての強制連行や人身売買ではないことを証明しなければならなかったのである。

以下は、「反日種族主義」の共著者の一人・朱益鐘(ジュ・イクジョン)李承晩学堂理事が、YouTube動画「李承晩TV」20210220で紹介している内容。  

1937年7月、日中戦争が始まる前までは、中国旅行はパスポートも特別な証明書もなしで船に乗っていくことができた。日中戦争が起こった後は、日本政府は日本や朝鮮、台湾から中国本土に行こうとする人々に対して、その旅行を規制するため、日中事変から2か月後(1937年9月10日以降)には中国渡航のため必要書類の様式を整えた。

旅行をしようとする者は、居住地の警察署長が発行する身分証明書がなければ渡航できなかった。身分証明書には、本籍、現住所、職業、姓名、生年月日、中国に行く目的、期間が書かれた。証明書の発行日付、発行した警察庁長の名前が明記された。この書類がなければ中国に行くことができなかった。

また一般旅行者ではなく、慰安婦を連れて行く場合には、さらに以下のような複数の書類が必要だった。

慰安婦渡航時の必要書類として①「臨時酌婦営業許可願」(酌婦の仕事をしようとする女性と抱え主の申請書)。この書類には、女性の写真2枚を添付し、承諾書(女性とその戸主・親権者が酌婦の仕事にするという意思を示した承諾書)、②印鑑証明書(営業許可願いと承諾書に押印した印鑑の証明)、③戸籍謄本、④調査書(酌婦の仕事をする女性に対する調書)が必要だった。

臨時酌婦営業許可願と書かれた書類は、題目の次に記入する関連事項がいくつかあって、最後に「在上海日本総領事館御中」とあるので、中国駐在の在外公館長に提出するためのものだった。書類には、本籍、現住所、営業場所、家号(慰安所の名前)、芸名(慰安所での酌婦女性に名前)、本名、生年月日を書き込み、その次に「酌婦の仕事をしようと必要書類を提出する」とあり、提出日を書いて、酌婦本人と抱え主がそれぞれ捺印するようになっている。

次に承諾書は、女性とその戸主・親権者が酌婦の仕事にするという意思を示した書類で、戸主・親権者の名前と押印、「稼業人」として慰安婦の女性の氏名と押印がある文書である。

次に調査書とは、酌婦の仕事をする女性の身元を記録した書類で、「酌婦稼業者何某ニ対スル調査書」とあり、調査者の名前を書いたあと、前居住地、現住所と移動年月日、教育程度・経歴、酌婦稼業をするに至った理由、刑罰に処せられたことがあるかないか、両親、または内縁の夫の有無とその職業、別に借りた借金、参考事項などの項目が並んでいる。おそらく調査者が酌婦となる女性から聞き取った内容を項目に従って聞き取った内容をメモしたものと思われる。

慰安婦の女性を中国や東南アジアに連れて行こうとするとこれだけの書類が必要だった。つまり、日本という国は、それだけ規則や法律、制度に基づいて運営される透明な法治国家であることに証明でもある。こうした書類の向こうのどこに、強制連行や性奴隷などという無法、違法な世界が現出できるというのか。

仮に、女性を拉致し強制連行したというならば、こうした書類はどうすれば作成することができたのか?女性を拉致・強制連行したとして、その戸主や親権者の捺印が必要な承諾書をどうやって作成することができたのか、戸主や親権者の承認がないのに印鑑証明書や戸籍謄本は、どうすれば役所から発行してもらうことができたのか?

ラムザイヤー教授の論文が、これだけやり玉にあがり、注目されることによって、こうした証拠書類が突きつけられ、真実がつぎつぎあぶり出され、韓国の慰安婦被害者と称する女性たちの証言や、慰安婦支援団体のごり押し、韓国裁判所の判断には、初めから無理があることが明るみにでることになった。これもラムザイヤー教授の大きな功績といえるかもしれない。

周縁から中国を覗く

拡張覇権主義のチャイナの姿をその周縁部から覗いてみる。そこには抑圧された民族、消滅させられていく文化や歴史が垣間見える。

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